壁プロジェクト ツインギャラリー蔵
「探す、刻む、包みこむ」
ギャラリーの壁をつくろう
制作期間(公開制作・参加型) :2024 年 2 月 26 日~ 5月6 日
展示期間 2024年 :4 月20 日~ 7 月5 日
原状復帰作業(埋戻し): 7 月6 日~ 11 日
織物業の蔵を改装したギャラリーのリニューアルオープン企画にて展示しました。
インスタレーション作品の展示に加えて、壁ワークスの公開制作、参加型制作を行いました。
2024 年 2月下旬より公開制作をしながら下地をつくり、
会期中に訪れた人々は、彫刻刀を使い壁に各々の線を削りだすことが出来ます。
誰かの終点が誰かの始点となり、刻まれた線は繋がり、やがて埋め戻されます。
来場者によって刻まれた線は、目には見えない形でギャラリーを内側から包み、
この場所を訪れる人々をそっと見守り続ける壁として在り続けます。
「塗る」
養生、色塗装、パテ盛、白塗装
公開制作期間: 2024 年 2 月 26 日~ 4 月 19 日
ギャラリーに入ってすぐの、光いっぱいのサンルーム。
ガラスの大きな窓に面した壁を養生し、色を塗り重ね、さらにパテと白い塗装で閉じ込めます。
塗装に使う色は、ギャラリー蔵の方と相談して決めました。
サンルームは外部から内側へとつなぐ中間的な部屋、大きな窓ガラスからは往来が良く見えました。
つまり往来からも良く見える環境です。
そこで、削る時に最も表層となる最後の色を「空の色」に、そこへ向かう内側の色はと考えてゆき、
結果的には 8 色、合計 20 回の塗装になりました。
作業中は公開制作で、訪れた方々のポートレイト撮影を行い、
その日のうちにプリントして、ギャラリーの柱に貼り付けていました。
展覧会期中はアルバムのようにファイルに綴じて、壁の前に置きました。
「刻む」
参加者による刻む行為
参加型制作期間: 2024 年 4 月 20 日~ 5 月 6 日
出来上がった真っ白な壁。
それを削ることで見えてくる、隠れた色たち。
たくさんの方が少しずつ刻む線がつながり、壁を埋めていきます。
誰かの終点が、次の人の始点になるというルールは以前のものを継承しました。
削りの初めの頃は遠慮がちだった線が、増えるにつれ大胆な表現になるのは、
目の前に「多様な前例」が増えてゆくせいでしょうか。
前に刻まれた線の流れを意識して刻む人、線の向かう方向に意味を持たせる人、
現れる色のディテールを追う人、だれもやっていない線を目指して刻む人。
多彩な線が生み出される様子を見ていると、人が「社会」というものを意識せずにはおれない生き物であることを感じます。
誰かの続きを削る、ということが そうさせるのか、いつでも全体像が見渡せるからなのか。
それが「壁」であることも理由なのかもしれません。
〈削りのルール〉
1、15cm、30cm、90cm の紐からお好きな長さを選び、紐の長さに合わせて、
ご自身の気持ちの良い線をゆっくり刻んでください。
※ 紐の長さは途中で変えられません。
2、刻んだ感触や質感を紙切れに記入し容器に入れてください。
あるいは、スタッフに伝えてください。伝えた言葉はスタッフが書いて容器に入れます。
3、あなたの終点は、次に刻む人の始点となります。
刻まれた線は、いずれ埋め戻され目には見えない形でギャラリーを内側から包み続ける壁になります。
言葉になった感触も言葉にならなかった感触も、瓶の中でコロコロと音を立てながら静かに存在し続けます。
「フロッタージュ・パネルへの移設」
手の跡を追いかける
制作期間: 2024 年 6月5日~20日
多彩で自由、そして混沌とした線の集積を埋戻す前に、
全ての線をフロッタージュ(こすり出し)で紙にトレースします。
写真では伝えきれない線の動きが出現し、その姿には圧倒されます。
現れた線をそのままに、用意した色層パネル(展示期間中は白紙状態での展示)へと移設を試みました。
トレース図像に沿い、真似彫りをして、作者の手の動きを追体験します。
埋め戻されるまえに、私自身の身体に刻むような儀式的な作業です。
完成した作品は、空間から切り離され、独立したトレース作品となります。
「ギャラリー蔵 2024 サンルームの記憶」
サイズ 1300×900(mm)
ペンキ・パテ
「包みこむ」
線を壁に埋め込む
原状復帰作業(埋戻し) : 7 月 6 日~11 日
いよいよ、線を埋めていく工程です。
作業に入る初日に「包みこむ」にかけて、
ギャラリーで水餃子を皮から作り、包んで食べて、おしゃべりするイベントを行いました。
壁では指先で線の動きを追ったり、フロッタージュで線を探したり、
これまでの関係者が入れ替わり訪れ、話題は尽きず、とても賑やかな日。
祭りの終わりのような様相を経て、その後数日をかけて線は埋め込まれていきました。
「傷と風」
ペンキ・パテ
壁プロジェクトに使用した壁から延長上にあるトイレの壁。
このスペ ースのみ作家本人が削り、埋め戻さずギャラリー常設の展示作品となります。
壁プロジェクトで、私自身が削ったものを建物内に残すことは今回初めてです。
トイレの壁に目を凝らすと見える、小さな傷をつけました。
小さな傷を風が撫でてゆきます。